放射線による人体影響を評価するために、「実効線量(Effective Dose)」という概念があります。これは体内の各臓器・組織が受ける影響を放射線の種類や臓器感受性に応じて重み付けし、全身へのリスクを統合的に示すものです。ただし、実効線量は実際に測定することはできません。
✔ 実用量:実効線量を推定するための現場向け指標
臨床現場や作業環境での被ばく管理では、実用量(Operational Quantity)として次のような値が使われます:
- 周辺線量当量 H*(10):サーベイメーター等で空間線量を測るときに使われます(1cm深)。
- 個人線量当量 Hp(d):個人線量計で測定される線量で、d=10mm(体幹)、3mm(目の水晶体)、70μm(皮膚)などに応じて異なります。
特に獣医療現場では、動物の保持や補助のために近接作業が多く、入射方向が一定ではない場合もあるため、個人線量当量 Hp(10)が防護管理の中心になります。これは放射線が人体に到達する深さ1cmでの線量を想定しており、人体へのリスク評価に最も適した実用量とされています。
🔄 サーベイメーターと線量計の違い
- サーベイメーター → 周辺線量当量(空間線量)を測定
- 個人線量計(ガラスバッジ等)→ 個人線量当量を測定(着用位置が重要)
ただし、身体前面のみに装着する個人線量計では背面からの放射線は自己遮蔽されるため、周辺線量当量より低く測定される傾向にあります。
📘 法令との関係
日本では「電離放射線障害防止規則」や「獣医療法施行規則」に基づき、作業者は被ばく線量の把握と管理を求められています。実用量の概念はこれらの法令に準拠した線量管理の基本単位として採用されています。
🌐 国際基準(IAEA)との整合性
IAEA(国際原子力機関)は、個人モニタリングにおいて個人線量当量を、施設モニタリングにおいて周辺線量当量を用いることを推奨しています。VetRad Supportで提供する教育資料・講習は、この国際基準に準拠して構成されています。
正しい線量の理解と評価が、安全な放射線管理の第一歩です。
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