動物病院、動物園、水族館などで行われるX線撮影では、獣医師や補助スタッフが散乱線を受ける可能性があります。放射線被ばくのリスクを正確に評価・管理するために、個人線量計(ガラスバッジ)の 正しい装着方法 を理解しておくことは非常に重要です。
ガラスバッジとは?
ガラスバッジは、放射線作業従事者の 1か月あたりの累積線量 を評価する目的で用いられる個人線量計です。千代田テクノルのガラスバッジサービスでは、線量計ラベルに 氏名・装着部位・使用期間 などが明記されており、装着位置も明確に指示されています。
標準的な装着位置
- 男性: 胸部
- 女性: 腹部
ラベルには装着部位を示す 色分け(例:緑=胸部、ピンク=腹部) やアイコンが表示されています。

防護衣を着用する場合
防護エプロンを着用する業務では、防護衣の内側と外側に装着(2個以上)する必要があります。

眼の水晶体用バッジについて
水晶体線量(Hp(3))を評価するには、専用バッジを 頬骨部や防護眼鏡の内側 に装着します。高線量領域で作業する獣医師や技術者には特に重要です。

よくある誤装着とリスク
誤装着の例 | 想定される問題 |
---|---|
防護衣の内側に装着 | 被ばく線量が過小評価される |
腰やズボンに装着 | 評価すべき部位とずれる |
ポケットに入れたまま | 装着状況が不安定になり、正確に記録できない |
頸部線量計と胸部線量計を逆に装着 | 目的とする部位の正確な線量評価ができない |
頸部・胸部どちらもエプロンの内側 | 線量が大きく過小評価され、実被ばくが見落とされる可能性 |
頸部・胸部どちらもエプロンの外側 | 意図せず線量が過大評価され、不要な制限の原因となる場合も |
線量計を装着しない | 被ばく線量の記録ができず、法令違反・安全管理上の重大リスク |
🔸 防護エプロン装着時:線量計が1つしかない場合の装着位置
放射線業務従事者が防護エプロンを着用し、線量計(ガラスバッジ)が1つのみの場合には、 次のように装着することが推奨されています。
✅ 装着位置の原則
- 防護エプロンの外側、
- 頸部または胸部(腹部)の中心部(エプロン上部)に装着
線量計をエプロンの内側に装着すると、放射線が遮蔽され、実際の被ばく線量が過小評価される恐れがあります。
このため、「エプロン外側に装着」が国際基準および国内法令において基本とされています。
📘 補足:装着位置の比較表
装着方法 | 装着位置 | 備考 |
---|---|---|
標準装着(1個のみ) | エプロン外側の頸部または胸部 | 被ばく線量の正確な把握が可能 |
2個使用する場合 | 外側(頸部)+内側(胸部) | 外部・内部両方の線量を評価できる |
高線量局所被ばく時 | 高線量側の部位に近づけて装着 | 例:手、眼、水晶体など |
線量計は「着ければよい」ではなく、「どこに着けるか」が安全管理のカギとなります。
装着管理のポイント
- 毎日の装着時にラベルと装着位置を確認
- 専用ケースで保管・紛失防止の徹底
- 未装着や誤装着の記録と報告を実施
参考リンク
おわりに
被ばく線量の管理は、「見えない安心」を支える基本です。装着方法を見直し、安全文化の定着につなげていきましょう。
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