LNT(Linear Non-Threshold)仮説とは、放射線の被ばくによる影響は、どれほど少量であってもゼロではなく、被ばく量に比例してリスクが増すという考え方です。
つまり、安全な「しきい値」は存在しないと仮定しています。
🔸 放射線の影響は2種類
分類 | 内容 | しきい値の有無 |
---|---|---|
🧬 確率的影響 | がんや遺伝的影響など、DNA損傷が原因とされる影響 | ❌ なし(とされる) |
🩹 確定的影響 | 皮膚障害・脱毛・白内障など、高線量で発生する影響 | ✅ あり(明確な境界がある) |
📉 なぜ「仮説」なのか?
実際には、100mSv以下の低線量被ばくでがんリスクの増加は統計的に確認されていません。
しかし「安全とは断言できない」ため、放射線防護の考え方としてLNT仮説が採用されています。科学的な確証があるわけではないため「仮説」とされています。
⚠️ LNT仮説の誤用と誤解
国際放射線防護委員会(ICRP)は、「LNT仮説はあくまで放射線管理のために用いるもので、個人の健康リスク評価に使うのは適切でない」と述べています。
しかし実際には、微量の被ばくに対して過剰にリスクを計算し、不安や誤解を生む事例が多く見られます。
🔍 低線量研究が示す新たな視点
これまでの研究から、同じ総線量でも、一度に被ばくする場合と少しずつ長期間にわたって被ばくする場合では、影響が異なることが明らかになっています。
特に、動物医療現場などで少量の被ばくを繰り返す状況では、LNT仮説が示すリスクよりも実際のリスクは低くなる可能性が示唆されています。
✅ 獣医療現場でのポイント
- 撮影補助などで放射線を扱う従事者は、LNT仮説の立場に基づき、「合理的に可能な限り低く抑える(ALARA原則)」が基本。
- 防護具の着用や散乱線の理解、適切なポジショニングが大切。
- 科学的根拠と安全側の立場を分けて理解することが重要。
放射線は“怖い”ではなく、“正しく理解して安全に使う”もの。
この記事は、VetRad Support が提供する獣医療放射線安全教育プログラムの一部です。
コメント