従事者の被ばくリスクを減らすには?—補助者の位置と防護具の工夫

獣医療放射線管理

📍 なぜ保定者が最も被ばくリスクが高いのか?

動物のX線撮影では、保定者(動物を保定する人)が被検体に近接して作業する必要があるため、
散乱線(動物から反射される放射線)を浴びやすい位置に立たされることが多くなります。

さらに、携帯型X線装置を使用する施設では、装置と保定者の距離が極めて近いことが多く、
意図せず直接照射を受けるリスクもゼロではありません。

🔻 こんな配置、していませんか?

  • 動物の正面から真正面で保定(=照射野の延長線上)
  • 手や腕が直接X線のビーム内に入ってしまう (照射野内に入っている)
  • 検査台の高さによっては、顔が被写体に近づいていると、動物からの散乱線を浴びるリスクが高まります

これらはすべて不必要な被ばくリスクを高める行為です。

✅ 被ばくを減らすための3つのポイント

① 立ち位置の工夫:「左右のずらし」と「後方距離」

動物のX線検査では、通常X線は上方から下方に照射されます。
このとき、散乱線は動物の体表面から全方向に放射されますが、特にX線が通過した体幹部の周囲では強くなります

そのため、保定者が動物の正面や背側(上面)に近づくと、より多くの散乱線を受ける可能性があります。

安全のためには、保定時の立ち位置を次のように工夫することが有効です:

  • 動物の斜め後方・頭側:散乱線の中心から距離をとれる、比較的安全な位置
  • 動物の左右側方:距離をとることで散乱線を減らせるが、至近距離は避ける
  • 動物の正面・腹側・背側:最も被ばくリスクが高いため避ける

また、撮影時には可能な限り距離をとることが最も効果的です。距離が2倍になれば、散乱線量は約1/4に減少します(逆二乗則)。

② 防護具の正しい使用

防護具使用目的
鉛エプロン(0.25〜0.35mmPb)胴体前面の散乱線防護
ネックガード甲状腺の保護
鉛入りグローブ指や手の防護(ただし、直接照射には使わない)
防護眼鏡 (0.07〜0.75mmPb)眼の水晶体の防護
フィット感は大切
  • グローブは保定補助具と組み合わせることで効果を最大限に
  • グローブを使用しない場合は、照射野外で動物を保定する
  • 破損のないものを選び、毎回使用前後に目視確認

③ 姿勢と高さの調整

  • 撮影台の高さを無理のない位置に調整
  • 動物が暴れないよう事前に保定方法を相談
  • 撮影時は必要最低限の時間のみ近接

🧭 まとめ:実践ポイント

  • 動物の真横・斜め後方から保定
  • 防護具(エプロン+ネックガード)を必ず着用
  • 防護手袋は使用しにくいため、照射野内に手を入れないことを心がける
  • 無理のない姿勢で短時間対応を徹底

🖼️ 次回予告

📌 保定者が入れてはいけない場所とは?—図解で学ぶ“直接照射エリア”

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