グリーンOA(オープンアクセス)のメリットとデメリット

研究

オープンアクセス(OA)は、学術出版の世界に革命をもたらしています。制約なしの知識の共有を目指して設立されたOAは、基本的に、出版物をオンラインで、購読料を支払うことなくいつでも利用できることを意味します。このような研究知識の自由な共有は、著者、読者、そして研究資金提供者にとって、非常に価値のあることとなります。OAの実現方法として、ゴールドOAとグリーンOAの2つのアプローチがあります。 この記事では、グリーンOAの基本的な概念と、その利点・欠点に焦点を当てて詳しく解説します。

ゴールドOAとグリーンOAの違いについて

ゴールドOAとグリーンOAは、オープンサイエンスを実現するための2つの異なるアプローチです。

  1. ゴールドOA: この方式では、論文の最終版が出版社が運営するウェブサイトに掲載されます。これにより、誰もが無料でその論文にアクセスできます。通常、出版のための費用は著者やその研究資金提供者から徴収されるため、読者は追加の費用を支払うことなく論文を読むことができます。
  2. グリーンOA: この方式では、購読型ジャーナルに掲載された論文が、著者自らや所属機関のウェブサイト、あるいはリポジトリにセルフアーカイブされます。これにより、誰もが該当論文を自由に閲覧することが可能となります。ただし、公開される論文のバージョンは、ジャーナルに掲載された公開版とは異なることが多いです。公開される版は、著者が最終的に仕上げた「著者最終稿」や、出版社が公開を許可した特定のバージョンとなります。

グリーンOAについて

グリーンOAは、論文の著者自身が、自らのウェブサイト、所属研究室、大学、研究機関のウェブサイト、またはリポジトリに論文をアーカイブする形式です。これにより、一般の人々が無料で論文を閲覧できるようになります。この方法は「セルフアーカイブ」とも称されます。しかし、全ての購読型学術雑誌がセルフアーカイブを許可しているわけではないため、投稿を検討しているジャーナルがセルフアーカイブを許可しているか、事前に確認する必要があります。また、著者がどのバージョンの論文を公開できるかは、ジャーナルや出版社の規定に基づいています。このため、セルフアーカイブされた論文が必ずしも査読を経たものとは限りません。査読前の論文は「プレプリント」、査読後の修正が完了した論文は「ポストプリント」として知られており、どちらのバージョンを公開できるかは、ジャーナルの方針に依存します。

多くのOAジャーナルや出版社は、セルフアーカイブに関するポリシーを明確にしています。これには、どのバージョンの論文をリポジトリに公開してよいかなどの詳細な条件が記載されています。購読型ジャーナルに掲載された論文でも、公開版をセルフアーカイブできる場合があります。ただし、公開を認めるまでの「猶予期間」が設けられていることも多く、その期間は数ヶ月から数年と、ジャーナルによって異なります。いくつかのジャーナルでは、猶予期間なしで即時に公開することが許可されているので、具体的な方針は各ジャーナルや出版社で確認することをおすすめします。 さらに、一部のOAジャーナルは、著作権を著者に留保する形となっています。多くは「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」を採用していますが、著作権の取り扱いについても、各ジャーナルでの確認が必要です。

グリーンOAのメリット

  1. アクセス性の向上: 著者や所属機関のウェブサイト、リポジトリを通じて、一般の人々や研究者が無料で研究結果を閲覧できるようになります。これにより、知識の共有と拡散が促進されます。
  2. コスト削減: 購読料やアクセス料を支払うことなく、研究成果にアクセスできるため、研究者や学者、一般の人々のコスト負担が軽減されます。
  3. 研究の可視性向上: セルフアーカイブによって、論文が多くの人々に晒されることで、その研究の引用率や認知度が上がる可能性があります。
  4. 著作権の維持: セルフアーカイブにおいては、著者が論文の著作権を維持することができる場合が多いです。

グリーンOAのデメリット

  1. 質の不均一: グリーンOAでは査読前のプレプリントが公開されることもあるため、全ての公開論文が査読を受けたものとは限りません。このため、情報の質が不均一となるリスクがあります。
  2. 猶予期間の存在: 一部のジャーナルでは公開までの猶予期間が存在するため、最新の研究成果がすぐに公開されないことがあります。
  3. 複数バージョンの混在: ジャーナルによっては、査読前のバージョンや著者最終稿など、異なるバージョンの論文が公開されることがあります。これにより、読者がどのバージョンを参照すればよいのか混乱する可能性があります。
  4. ジャーナルのポリシーの違い: ジャーナルや出版社によってセルフアーカイブのポリシーが異なるため、著者は自らの論文をどこで、どのように公開するかを常に確認しなければなりません。

まとめ

グリーンOAは、研究成果のアクセス性を向上させることを目的としていますが、その方法や適用範囲にはジャーナルや出版社のポリシーによる違いが存在します。研究者や著者は、これらのポリシーをよく理解し、自らの研究成果を適切に公開するための手段を選択することが重要です。

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